Tuesday, March 29, 2016

二宮正治小説:女性国会議員が恋をして何が悪い:第6回

女性国会議員Aは自分の選挙区の居酒屋で若者と大いに盛り上がり、

一夜の恋を楽しもうと思ったが、それはできなかった。

やはりスキャンダルが恐ろしい。

近くの公園で酔を冷ましていると、

「ああ先生じゃないですか」

 と声をかけてくる男性がいた。

Aの健康診断をしてくれている医師Nである。

「今日は若者と飲み過ぎちゃってねえ、酔を冷ましているの」

 このAの言葉に、Nは、

「うやらましい、ぼくはお酒がのめないから」

 ポツリとこう言った。

そして、

「女房を亡くして夜が長くて」

 寂しそうに呟いた。

「可哀想」

「ええ」

 Aは恋が芽生える予感がしていた。


Sunday, March 27, 2016

二宮正治小説:女性国会議員が恋をして何が悪い:第5回

 女性国会議員Aの心と身体は燃えに燃えていた。

大好きな焼酎黒霧島を湯割りにして飲んだ。

「今日は黒霧島を飲んでぐっすり寝よう」

 こう思いながらチビチビ飲んでいたが、

目が冴えて余計に体が火照ってきた。

「誰か私を慰めて」

 こう呟くがどうしようもない。

Aは寝るのを諦めて自分の選挙区の若者が集うスナックへと向かった。

「これはこれはA先生ようこそ」

 若者がAを迎えてくれる。

「若い人はいいわね」

「A先生だって若いよ」

「もうあばあちゃんよ」

「そんな事ない」

 Aの週末の楽しい会話が始まった。

Wednesday, March 23, 2016

二宮正治小説:女性国会議員が恋をして何が悪い:第4回

 女性国会議員Aは日頃から尊敬してやまない政治評論家Vとお酒を飲んだ。

そして、

「一夜を一緒に過ごそう」

 Aのこの誘いをVはやんわりと断った。

「明日朝はやいから」

 こう言って帰って行ったのである。

Aは腹が立ってVの後をタクシーでつけると、

Vはあるホテルに入って行った。

そこには某新聞社の若手ジャーナリストが待っていた。

「ああ、うわさ通りのプレイボーイさんだ」

 Aはこう言って自分を慰めたが、

自分の申し出を断られた憤りが消えない。

「若い女には勝てない」

 必死で自分にこう言い聞かせたが、

それでも腹の虫が収まらない。

Monday, March 21, 2016

二宮正治小説:女性国会議員が恋をして何が悪い:第3回

 女性国会議員Aは週末の夜なかなか寝付かれない。

「ああ、だれが私を愛して」

 何度もこう呟いた。

呟けば呟くほど寝れなくなる。

Aは寝るのを諦めて鏡の前に立った。

そしてセクシーな下着をつけてこう自分自身に言い聞かせた。

「私は女としてまだまだ行ける。捨てたもんじゃあない。素敵な彼氏が必ず現れる。死んだ夫への

義理は済んだ」

 「六十女には六十歳の女の良さがある」

  Aの気持ちは高ぶっていた。

「私を抱いて」

 Aの女の情念は燃え盛っていた。

Saturday, March 19, 2016

二宮正治小説:女性国会議員が恋をして何が悪い:第2回:新連載

 女性国会議員Aは同じ年代で同期の議員たちと金曜の夜語り合っていた。

「私は六十歳を過ぎても恋をしたいよの」

 このAの言葉に、

「そりゃあそうだろう。六十なんて青春まっただ中だ」

 厚生労働省出身で高齢者問題が専門の男性議員がAにこう言葉を返した。

「私この歳でまだ恋に恋するの」

 Aが恥ずかしそうにこう言うと、同期の女性議員が、

「だれでもそうよ」

 こう相槌を打った。

「それを聞いて安心した。私は夫をなくして『長々し夜を一人かもねん』毎日この世界だから」

「それは可哀想。恋人はいないの」

「いない」

「つくればいいじゃない」

「つくれない」

 しばしの沈黙の後、

「求めよ、さらば与えられん」

 財務官僚出身の男性議員がAにこう言うと、

みんなどっと笑った。

Friday, March 18, 2016

二宮正治小説:女性国会議員が恋をして何が悪い:第1回:新連載

 女性国会議員Aは夫に先立たれて三年が過ぎようとしている。

Aはもう六十歳を越えた。最近今までに味わった事のない孤独感にさいなまれていた。

Aは国会議員になって二十数年になる。大臣も経験した。

仲間の議員に、

「あと私が狙うのは総理だけ」

 冗談めかしていつもこう言うのだが、

腹の底では本気で総理の座を狙っていた。

Aは若手の議員から、

「うるさいおばさん」

 こんな目で見られている。

国会にいる時は気が張り詰めているので、寂しさを味わう事はなかったが、

一度仕事が終わり議員宿舎に返って一段落すると、

Aに孤独感という魔物が襲って来るのだった。